今村彩子監督とは?字幕映画から生きる勇気をもらったろう者の映画監督

ろう者は、さまざまな場で活躍しています。

私たちが娯楽として観る映画の世界でもろう者は活躍しており、今回は映画監督として活躍するろう者の女性をご紹介します。

今村彩子さんは、これまで30本以上もの映画を撮影してきた映画監督で、代表作のなかには文部省選定作品に選ばれた作品もあります。

今回は、今村彩子監督がなぜ映画監督を志したのか、代表作のなかから3作品をご紹介いたします。

目次

映画監督 今村彩子さんとは?

愛知県名古屋市出身の映画監督、今村彩子さんはろう者です。

現在は、愛知学院大学で講師をしながら、映像制作を行っている今村さんは、主な作品として全6作品を制作してきました。

では、なぜ今村さんは映画監督を志したのでしょうか?

きこえないことでいじめに…中学でろう学校に転校

2歳のときに聞こえないことが分かった今村さんは、名古屋市のろう学校の幼稚部に入園しました。

小学校と中学校は地元の公立学校へ通いましたが、地元の中学に通っている間にいじめに遭い、場になじまず3か月間不登校になっています。

今村さんのお母さんが、心配して「ろう学校に通ってみる?」と提案してくれたのをきっかけに、当時は「手話は日本語の読み書きができない人、話せない人が使う物」という偏見から、ろう学校も手話も嫌いだった今村さんはろう学校へ転入しました。

ろう学校での生活は穏やかで、恋も経験することができ、無事に卒業することができました。

字幕映画から生きる勇気をもらった

今村さんの家族は、今村さん以外みんなきこえる人でした。

家族全員で映画やテレビを見ていたときに、みんなが笑って盛り上がると「少し寂しいな」と感じることも…。

お母さんがときどき通訳をしてくれましたが、小学2〜3年生の頃に「ああ、寂しいな」と感じたことが、今村さんが映画監督を志すきっかけでした。

今村さんのこの様子を気にしたお父さんが、洋画の字幕付きビデオを借りてきてくれて、字幕のおかげで内容がすごく伝わり、今村さんは感動しました。

小学校の同級生とうまくコミュニケーションをとれなくても、家に帰ればビデオがある、映画がある、字幕がある…、今村さんは、映画から生きる勇気をもらいました。

テレビ局の面接が全滅…「Studio AYA」設立

大学在学中にカルフォルニア州立大学ノースリッジ校へ留学して、映画制作を学んだ今村さんは、帰国後も映画制作に夢中でした。

ときには映画作りに熱中し、大学のほうをおざなりにしてしまい、教授に叱られてしまうことも…。

大学卒業後は、いきなり自分が作った映画だけでは食べていけなかったので、今村さんはテレビ局の面接を受けましたが、全滅。

悔しさをバネに、「もうこうなったら自分でやっちゃおう!」と、今村さんが25歳のときに「Studio AYA」を設立しました。

20歳のときに映画を制作しはじめ、2021年時点で22年のキャリアとなりました。

多くの聴者にも観てほしい

今村さんの映画製作のテーマは、「コミュニケーション」です。

人間関係をテーマに、これまで30本以上の映画を制作しました。

はじめて制作した映画は、豊橋ろう学校のドキュメンタリー映画。

撮影のために、豊橋ろう学校で2日間撮影を聴者のリポーター2人で行ったときに、リポーターの男性は少し手話ができるので、ろう生徒と一緒にごはんを食べたり、お風呂に入ったときのことが印象的だったと語っています。

このとき、リポーターの方は「ろうの友人はいるけれど、実はその友人に対してかわいそう…とかそういうこと思っていたんだ。でもこの2日間、ろう生徒と一緒に過ごしてみて、かわいそうなのは自分のほうだと気づいたよ」

このときのリポーターの方の言葉は、今村さんに衝撃を与えます。

そのような意図があってのキャスティングではなく、この作品は「ろう学校は楽しい」というようにまとめようと考えていたからです。

リポーターの方の体験を感想として撮影し、作品に組み込んだことで、名古屋のビデオコンテストで最優秀賞を受賞することができました。

今村彩子監督の代表作

今村彩子監督は、これまで30本以上の映画を撮影してきており、代表作は全6作品です。
ここからは、その代表作のなかから一部をご紹介していきたいと思います。

珈琲とエンピツ(2011年)

映画の主人公は、静岡県でサーフショップ&ハワイアンの雑貨店でろう者の店主。

30年以上のサーファーとしてキャリアを持つ店主は、自らサーフボードを作る職人でもあった。

2007年4月には、長年の夢だった自分のお店をひらくことができた。

お店での客と店主とのコミュニケーションは、自らも愛飲するハワイの珈琲をサービスですすめること。

まずは珈琲を入れて、ジャスチャーですすめる。そして、紙とエンピツによる筆談が始まる。

ドキュメンタリー映画 珈琲とエンピツ公式サイト

架け橋 きこえなかった3.11(2013年)

津波警報が聞こえなかった。命を守る情報に格差があってはならない。

今村彩子監督が、東日本大震災の11日後に宮城を訪れて、2年4か月をかけて取材したドキュメンタリー作品。

一般のテレビや新聞で報道されなかった聞こえない人たちの現状を伝えるドキュメンタリー作品です。

架け橋 きこえなかった3.11公式サイト

11歳の君へ〜いろんなカタチの好き〜(2018年/文部省選定作品)

ろうLGBTのそれぞれの生い立ちや仕事、家族のことについてのインタビューと、LGBTの知識編の二部構成になったドキュメンタリー映画。

第一部では、5名のLGBTの方を取材。それぞれの“生き方”と“好き”の映像作品になっています。

第二部は、「4つの性(からだの性、こころの性、好きになる性、見た目の性)」「LGBTの手話表現」「傷つける言葉、アウティングについて」「カミングアウトについて」の4つを“もっと知ろう”というテーマで伝えます。

11歳の君へ〜いろいろなカタチの好き〜公式サイト

まとめ

今村彩子監督は、愛知県名古屋市に住むろう者の映画監督です。

これまで30本以上の映画を撮影してきており、代表作は6作品。

きこえる家族のなかで育った今村さんが、お父さんが借りてきてくれた1本のビデオによって映画と出会い、魅了されたことで映画監督を志しました。

今回ご紹介した代表作のうち、「珈琲とエンピツ」と「架け橋 きこえなかった3.11」はすでに完売してしまっていますが、「11歳の君へ〜いろいろなカタチの好き〜」はまだ販売しており、公式サイトでPR動画を視聴することができるのでぜひ観てみてはいかがでしょうか。

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