聴覚障害者にとって漫画は、文章や文字だけでは理解するのが難しいときに、イラストで表情や表現を理解することができます。
漫画は聴覚障害者にとって欠かせないツールの1つですが、聴覚障害がテーマの漫画作品であれば、より物語を理解しやすいのではないでしょうか?
聴覚障害者が登場する漫画作品

聴覚障害がテーマの漫画作品では、「遥かなる甲子園」や「どんぐりの家」などが有名ですが、他にも様々な漫画家が描いた聴覚障害をテーマにした漫画作品があります。
ここからは、コミックの他に電子書籍サービスでも読める、聴覚障害をテーマにした漫画作品を4つご紹介いたします。
ふつうな僕らの

湯木のじんさんが作者の「ふつうな僕らの」は、心臓の病気で移植手術をした主人公の花川 椿(はなかわ つばき)と、聴覚障害を抱える椿の1つ上の先輩、草野 一颯(くさの いぶき)の“特別”じゃない僕らのありふれた恋の物語。
椿は自身が心臓の手術を経験していることから、「普通」の尊さを知っている子で、自分の気持ちに正直に生きることをポリシーにしています。
ある日、椿は一颯が落とした定期を拾ったことから、椿は一颯のことを好きになります。
一颯は、自分が抱える聴覚障害のことで孤独感を感じていて…。
「ふつうな僕らの」は、コミックシーモアやLINEマンガなどの電子書籍サービスでも読むことができます。
ゆびさきと恋々

森下suuさんが作者の「ゆびさきと恋々(れんれん)」は、聴覚障害を抱えている主人公の雪と、雪の大学の先輩の逸臣(いつおみ)との純愛ストーリーです。
雪のコミュニケーション方法は手話ですが、ある日電車内で外国人の方に道を聞かれて困ってしまいます。
「話せない」と伝えることができずに慌てていると、そこに逸臣が現れて代わりに対応してくれたことでことなきを得ました。
雪は親友のりんに出来事を話すと、逸臣が同じ大学の先輩だということを知ります。
親友りんのバックアップのもと、雪は逸臣がバイトをしているカフェバーにりんと一緒に行き、ホワイトボードを使って筆談で会話をすることに。
逸臣が知る世界の話を聞くたびに雪は素直に驚くので、逸臣はいつしか雪に引き込まれていきます…。
「ゆびさきと恋々」は、コミックシーモアやめちゃコミックなどの電子書籍サービスでも読むことができます。
王様ランキング

十日草輔さんの作品「王様ランキング」は、2021年10月14日よりテレビアニメ化もされている漫画作品です。
今、ここではない魔法がある世界のお話。
国家間の力関係は、国の発展度合いや国王の臣下の数、国王自身の強さから導き出される「王様ランキング」の順位によって評価されていました。
作中の舞台となるボッス王国は、1代で王様ランキング7位までに上り詰めた豊かな国で、ボッス王の後継者の第一王子ボッジは、耳が聞こえず口がきけない聴覚障害を抱えています。
「王子なのに耳も聞こえず、口もきけない」と誰からもばかにされるボッジですが、ある日カゲに出会い、後にボッジの唯一の理解者になります。
ボッジは誰からも馬鹿にされていますが、誰よりも心が優しく、よりより国王になることを目指していました。
ボッジは、未熟ながらも少しずつ父を超える活躍を見せていきます。
「王様ランキング」は、コミックシーモアやebook japanなどの電子書籍サービスでも読むことができます。
CODA-コーダ-〜手話が嫌いだった私が手話通訳士になった理由〜

漫画家・イラストレータの青柳恵太さんの作品、「CODA-コーダ-〜手話が嫌いだった私が手話通訳士になった理由〜(以下、CODA)」は、「Children of Deaf Adults」の略で、聞こえない親を持つ聞こえる子供をテーマに描かれた作品です。
作者は実際にCODAと呼ばれる方々へ取材を行い、事実を基に本作を製作しています。
聴覚障害者の親を持つ子供は健聴者で、「親の耳が聞こえない」というたった一つの“違い”で、幼い頃からさまざまな葛藤と、聞こえる社会と聞こえない社会のはざまで戦っています。
「もう!おそとで手話なんかせんといてよ!」と1話で描かれている描写では、登場人物の女の子が抱える様々な問題や心境が伝わってきます。
もともとCODAは、作者が京都精華大学の卒業制作として製作された漫画で、卒業から6年後の2020年2月にリメイク版を発表しています。
CODAは、LINEマンガやAmazon kindle、作者のブログで読むことができます。
聴覚障害者の方などへ漫画の貸し出しが図書館ですすんでいる

各市区町村の図書館で、聴覚障害者の方に限らず、健聴者の方も必要であれば漫画の貸し出しサービスが広がっています。
その背景には、もともとは手話で会話を行い、相手の表情で感情を読むことが得意だけど、文章や文字の理解が苦手という聴覚障害者が多い背景から、一部自治体で行われていた聴覚障害者に対する漫画をはじめとする資料の貸し出しサービスでした。
ある自治体では聴覚障害者の方へ「マンガ利用券」を発行して、事務所内に設置している漫画専用の書架から希望の漫画を選んで、カウンターで貸し出しを行っていました。
その後、漫画所蔵館が全国の自治体で広がるようになり、聴覚障害者から「自分たちだけ特別扱いしないでほしい」「漫画を事務所内ではなく一般図書と同じように自由に借りたい」などの指摘を受けたで、現在では聴覚障害者だけではなく健聴者の方に対しても漫画の貸し出しが行われるようになりました。
現代では漫画は電子書籍か、実際の書籍で読むかの2つの方法で読むことができますが、書籍として手にとって漫画を読みたいという聴覚障害者の方も多いと思います。
しかし読みたい漫画を全て揃えると費用もかかるので、「どんな漫画なのか、まずは1巻読んでみたい」という作品があれば、図書館にないか探してみてはいかがでしょうか。
まとめ

聴覚障害をテーマにした漫画作品は、「ふつうな僕らの」「ゆびさきと恋々」「王様ランキング」「CODA」の4作品があります。
これらの漫画作品はコミックとして読める他に、電子書籍サービスでも読むことができるので、いつでもどこでも手軽に読むことができます。
自治体によっては漫画作品の貸し出しを行なっている場合も増えてきているので、図書館で借りるのもいいでしょう。