聴覚障害者の方にとって、見たい映画が字幕に対応しているかどうかはとても重要です。
特に日本の映画には日本語字幕が対応していないことが多いので、苦労された方が多いのではないでしょうか?
少し前までは、テレビで見たい映画が放送されると、すかさず字幕付きで録画をしたり、レンタルビデオ店で映画作品のパッケージを裏返して字幕対応かどうか確認していた方が多かったと思います。
しかし時代は変わり、現代では聴覚障害者の方が映画字幕をより手軽に利用できるようになりつつあります。
そこで今回は、聴覚障害者の方が字幕を利用して映画を楽しむ3つの方法についてご紹介いたします。
聴覚障害者が字幕を利用して映画を楽しむ3つの方法とは?

聴覚障害者の方が見たい映画が字幕に対応していないシーンで困るのが、日本の映画作品で多いのではないでしょうか?
海外の映画作品では日本語字幕に対応していることが一般的ですが、日本の映画作品に日本語字幕が対応していないことが多いので、見たくても見ることができずに諦めていた方が多いと思います。
そこでここからは、日本の映画作品に日本語字幕(バリアフリー日本語字幕)をつけることができる3つの方法をご紹介いたします。
1.「Netflix」「Hulu」で日本語字幕をつける
映画やアニメ・ドラマは動画配信サービスで楽しむ人が増えている現代では、様々な動画配信サービスが乱立しています。
その中でも、後でお話しする「バリアフリー日本語字幕」と呼ばれる、セリフ・話者の表記・効果音・音楽・状況が字幕で表示される字幕に対応していて、日本語作品に日本語字幕に対応しているのが「Netflix」と「Hulu」です。
バリアフリー字幕の対応作品数 | 無料体験の有無 | 料金 | |
---|---|---|---|
Netflix | 600作品以上 | なし | ・ベーシック:990円 ・スタンダード:1,490円 ・プレミアム:1,800円 |
Hulu | 180作品以上 | 2週間無料体験あり | 933円 |
上記の表のように、NetflixとHuluでは「バリアフリー日本語字幕の対応作品数」と「料金」の2つの違いがあります。
バリアフリー字幕作品数で言うとNetflixの方が多いので、映画だけではなくアニメやドラマも日本の作品にバリアフリー日本語字幕を対応させることができます。
Netflixでバリアフリー日本語字幕をつけるやり方は、見たい作品を再生して、右下の吹き出しマークから「日本語字幕(CC)」を選択するだけで映画に字幕を対応させることができます。
Huluでバリアフリー日本語字幕を対応させるやり方は、見たい作品を再生して、右下の歯車マークをクリックすると、「字幕ガイド」が表示されるのでONにすることで、映画に字幕を表示させることができます。
このように動画配信サービスを利用して映画を楽しみたい聴覚障害者の方は、バリアフリー日本語字幕に対応している動画配信サービスを選ぶことで、見たい映画を安心して見ることができます。
2.日本語字幕対応の映画館で映画を楽しむ
TOHOシネマズでは、聴覚障害者の方が映画館で日本の映画を楽しむことができるように、一部映画館で「日本語字幕付き上映」を行っています。
この日本語字幕はバリアフリー日本語字幕になっていて、セリフや効果音などがスクリーン上に文字で表示されます。
また、聴覚補助用のヘッドフォンを貸し出ししているので、補聴器を装着するだけでは音が聞き取りにくい方は利用することで、より映画を楽しむことができます。
【参照】日本語字幕付き上映のご案内|TOHO CINEMAS
【参照】聴覚補助用ヘッドフォンのお貸し出しのご案内|TOHO CINEMAS
また、2021年8月には秋田県の「アルヴェシアター」で、映画の字幕が専用メガネのレンズに映し出される「字幕メガネ」を使った上映会を実施しています。
この字幕メガネは「HELLO!MOVIE」というアプリと連動したスマートグラスになっていて、映画が上映されると音声を認識して、レンズにセリフや効果音などのバリアフリー日本語字幕が映し出されます。
【参照】聴覚障害者も映画館で鑑賞を字幕メガネ貸し出し|朝日新聞
映画館で聴覚障害者の方へのサポートが充実してきているので、ご紹介したバリアフリー日本語字幕対応の映画館の拡大や、字幕メガネの普及が広がれば、最新作の映画を楽しむことができるようになります。
3.「日本映画専門チャンネル」で字幕放送を利用する
日本映画放送株式会社が運営する専門チャンネル「日本映画専門チャンネル」は、日本の映画をはじめ、過去に地上波で放送されたドラマの再放送を行っているチャンネルです。
日本映画専門チャンネルでは、一部の映画やドラマで日本語字幕に対応しており、ハイビジョン放送やスカパー!、J:COMほか一部のケーブルテレビで視聴する方が利用することができます。
本映画専門チャンネルで映画に字幕を対応させるやり方は、テレビと同じで、リモコンの「字幕」ボタンを押すだけで利用することができます。
【参照】字幕放送|日本映画専門チャンネル
「バリアフリー日本語字幕」で聴覚障害者がより映画を楽しめるように

先ほどご紹介した「バリアフリー日本語字幕」は、従来の登場人物のセリフのみ字幕にしているものではなく、セリフをはじめ誰が話しているのか、どんな効果音がしているのか、どんな音楽が流れているのかなどを字幕にしたものです。
バリアフリー日本語字幕は、2006年12月13日に開催された第61回国連総会の「障害者権利条約」が採択されたのが始まりです。
条約の中には、「障害者が、利用しやすい様式を通じて、テレビジョン番組、映画、演劇その他の文化的な活動を享受(きょうじゅ)する機会有すること。」とあります。
また2016年4月1日に施行された「障害者差別解消法」によって、聴覚障害者の方に対する字幕放送はどんどん広がりを見せるようになりました。
さらに2021年5月には、「改正障害者差別解消法」が参議院本会議で可決され成立してから、これまで国や自治体のみの合理的配慮の義務付けだったのが、民間事業者も義務となりました。(施工猶予は3年間)
平成30年度の劇場公開作品613作品(邦画・アニメ)のうち、字幕ガイドが付けられた作品は85作品、音声ガイドは79作品だったことから、少しずつバリアフリー日本語字幕が広がりを見せています。
健聴者のように聴覚障害者がどこの映画館でもバリアフリー日本語字幕を楽しめるようになるためには、まだ少し未来の話になるかもしれませんが、字幕メガネの登場など時代に合わせて利用しやすいよう取り組みがすすんでいます。
【参照】映画・映像のバリアフリー化とは?|NPOメディア・アクセス・サポートセンター
まとめ

聴覚障害者にとって見たい映画作品が字幕に対応しているかどうかは非常に重要ですが、近年動画配信サービスや映画館、専門チャンネルなどで、バリアフリー日本語字幕の対応がすすんでいます。
現状はまだ完全に映画・映像のバリアフリー化が整っていませんが、近い将来聴覚障害者がより映画を楽しむことができるようになるのは明確なのではないでしょうか。