関西学院大学の「手話言語センター」は何をするところ?手話が日本語と同等の言語として認められるべき理由とは

手話を言語として専門的に研究を行う「手話言語センター」が、兵庫県にある関西学院大学にあります。

今回は、関西学院大学の手話言語研究センターは何をするところなのか?なぜ手話が日本語と同等の言語として認められる必要があるのかについて解説していきます。

目次

関西学院大学の「手話言語研究センター」とは?

関西学院大学は関西が誇る大学で、関西圏では「関関同立(かんかんどうりつ)」の通称で知られる難関私立大学のひとつです。

※【関】…関西大学 【関】…関西学院大学 【同】…同志社大学 【立】…立命館大学

関西学院大学では、「手話言語研究センター」が設置されています。

ここからは、関西学院大学の手話研究センターとはどういう目的で設置されているのか?どのような事業を行っているのかについて解説していきます。

手話言語を科学的・学術的研究を行う

関西学院大学の手話言語研究センターは、手話言語に関する科学的で学術的な研究を行い、手話の言語としての位置づけを学術的に確立することや、社会的な認知度を高めることを目的に設置されています。

形式的には、関西学院大学内の特定研究プロジェクトのひとつで、主に以下の3つの研究を行います。

  1. 音声言語と手話言語を主題とした学際的・領域横断的研究
  2. 手話言語を主題とした言語学的研究
  3. 手話言語教育を主題とした、手話言語の言語教育や手話言語・書記言語のバイリンガル教育にかかわる研究

関西学院大学の手話言語研究センターでは、音声言語の研究で得られた研究成果の普遍性(ふへんせい)を表現様式の異なる手話言語の研究で検証することは、学術的に限らず、社会的にも大きな意義があると考えます。

そのためにも、聴者やろう者が協働して、手話言語をテーマとした各種研究の振興や研究者の育成、手話言語教育の推進や充実、広く一般への啓発を行うことを目的としています。

具体的にはどのような活動を行っているのかというと、関西学院大学内に手話に関する科目である「寄附講座207「手話の世界」「手話言語学基礎」「手話言語学専門」の3つを設置して、関西学院大学学生の手話言語に対する理解を深めること。

この他には、関西学院大学外の社会的にも、初心者向けの手話に関する講話である「講話会」や、初学者や既修者向けの「講座」を実施。

さらに、ホームページを通じて、手話言語にかかわる最新の情報を広く発信しています。

3つの事業で広く一般への啓発を図る

  1. 研究事業
  2. 教育事業
  3. 啓発・普及事業

前述した内容から、関西学院大学の手話言語研究センターでは、上記3つの事業に取り組んでいます。

啓発・普及事業では、前述した講話会や講座の他に、2019年度から始まった「手話学コロキアム」や、同じく2019年度よりはじまった「手話通訳研修事業」、2017年度よりはじまった「文化イベント」によって、関西学院大学内外の希望者に対して開催されています。

2021年度では5つの事業を実施

  1. 文化イベント「ようこそ、ろう者の正解へ」
  2. 手話学コロキアム「手話研究の魅力」(全4回)
  3. 手話通訳研修「あなたの知らない手話通訳の世界〜手話による医療通訳〜」
  4. 海外5大学と協働で手話言語学、ろう文化、ろう研究等に関する全5回の講演動画の配信
  5. AIが手話表現を認識する手話学習ゲーム「手話タウン」に協力

2021年度の手話通訳研究センターは、上記5つの事業を実施しました。

特に5つ目の「手話タウン」は、Googleとの共同開発となっており、手話を楽しみながら学習できるゲーム体験ができるようになっています。

手話タウンは2021年9月22日に公式リリースされており、開発には関西学院大学の手話言語研究センターの他に、日本財団や、香港中文大学、約8,500名のベータ版利用者の協力のもとで完成しました。

手話タウン公式リリース版

「手話」という言語を広く普及しなければならない理由

平成18年度に実施された「障がい者の社会参加促進等に関する国際比較調査」によると、「障害に関する言葉を10項目あげてください」という質問に対して、日本では「手話」が97.7%と最も多かったことから、日本では手話という言葉自体は認知されていることがわかります。

しかし、手話そのものを理解している人は少ない印象があります。

聞こえる・聞こえないを問わずに、誰もが快適に不自由することなく日本で生きていくためには、「手話を学ぶ機会」や「手話を話す機会」をより増やす必要があるのではないでしょうか?

ここからは、なぜ手話という言語を広く普及しなければならないのかについて、その理由をご紹介いたします。

聞こえる・聞こえないを問わずに共に生きる社会が実現可能

手話は、聞こえない・聞こえにくい人にとっては母国語であり、欠かせないものですが、聴者にとって「言語」として認知されているとは限りません。

聴者が当たり前に耳で聞いて、声を出して話す日本語と同様に、手話を母国語のひとつであると認めることで、聞こえる・聞こえないを問わずに共に生きる社会を実現することが可能になります。

手話は、すでに世界約30か国で憲法や法律によって「公的言語」であると認められており、近年では日本国内の33県市町が手話言語条約を制定、28自治体が制定準備を進めています。

手話を公的言語として日本でも認めようという動きが活発化している背景には、ろう者が抱えるさまざまな問題が潜んでいます。

例えば、日本では令和の現代でも、ろう者であっても手話に限定して学ぶ・話すのではなく、聞こえにくくても、聞こえなくても音声や文字で学習する傾向があります。

しかしこれは、ろう者のコミュニケーション手段を奪ってしまうので、特に耳が聞こえにくい・聞こえない乳幼児の発達面においても大きな影響を与えることが懸念されています。

「手話言語法」制定が求められている

手話を日本語と同様の公的言語であると認める「手話言語法(仮)」が制定されれば、聞こえにくい・聞こえない乳幼児が獲得する言語として、手話が保障されることになります。

もし手話を学ぶことが保障されれば、ろう者はコミュニケーションの手段を得ることができるようになるので、ろう者が社会的に自由に生きられることにつながります。

  1. 手話言語の獲得
  2. 手話言語で学ぶ
  3. 手話言語を習得する
  4. 手話言語を使う
  5. 手話言語を守る

手話言語法では、上記5つの基本的な権利を保障するために制定が求められています。

聴者にとって、日本語を学ぶことや話すことなどが当たり前であるように、ろう者にとっても手話言語で学ぶことや話すことなどが当たり前になることで、より誰もが暮らしやすい社会になるのではないでしょうか。

まとめ

手話言語について、専門的な研究を行う関西学院大学の手話言語研究センターでは、ご紹介したように「研究事業」「教育事業」「啓発・普及事業」の3つの事業に取り組んでいますが、そのなかでも大学内外の希望者を対象に行われる講座などのイベントは、貴重な手話を学ぶ場となっています。

手話言語はまだ日本語と同等の言語として認められておらず、ろう者であっても手話を学ぶ機会や手話を話す権利が侵害されることもあります。

このような事態を防ぎ、基本的なろう者の権利を守るためにも、「手話言語法」の制定が求められています。

法律や憲法によって手話を学ぶこと、手話を話すことなどが権利として認められれば、より聞こえる・聞こえないを問わずに、生きやすい社会になるのではないでしょうか。

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