聴覚障害者の方同士であれば、LINEやZOOMのビデオ通話機能を活用して、手話でリモート会議を行うことができます。
しかし聴覚障害者の方と健聴者の方が混在したコミュニケーションの場では、LINEとZOOMをどのように活用すればいいのでしょうか?
今回は、聴覚障害者の方と健聴者の方がスムーズなコミュニケーションがとれる、LINEとZOOMの活用方法をご紹介いたします。
LINEで日常会話から防災速報まで活用できる

聴覚障害者の方と健聴者の方の間で、最も大きな「壁」となるのがコミュニケーションです。
近年、スマホやタブレットのメモ機能を使って筆談ができたり、筆談専用のアプリがリリースされるなどしていますが、テンポよくリアルタイムなやりとりができないというデメリットがあります。
そこで多くの人が当たり前に利用している「LINE」を活用することで、言葉の壁をなくし、リアルタイムなコミュニケーションが可能になります。
令和3年8月に総務省情報通信政策研究所が公表した、「令和2年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、LINEの利用率は一貫して増加傾向にあり、年代別では10〜40代で90%を超過しています。
幅広い世代で利用されているLINEであれば、気軽に聴覚障害者の方と健聴者の方がコミュニケーションをとることができます。
1:1から最大500人までのコミュニケーションが可能
LINEでは1:1のトークはもちろん、最大100人まで参加できる「複数人トーク」や、最大500人まで参加できる「グループトーク」があります。
会社や学校などで、聴覚障害者の方と健聴者の方がコミュニケーションをとる際は、「グループトーク」がおすすめです。
グループトークは招待を送り、相手から承認される必要がありますが、複数人トークでは利用できないノートやアルバム機能が利用できます。
アルバム機能やノート機能をグループトーク内の人たちと共有できるので、会社や学校の業務連絡などに活用することができます。
グループトークの利用方法は、以下の手順で行います。
- 「トーク」タブを開いて、右上の「吹き出しマーク」をタップ
- 「トークルームを作成」が開くので、中央の「グループ」をタップ
- グループに招待したい人を選択して、右上の「次へ」をタップ
- 「グループプロフィール設定」が開くので、アイコンやグループ名などを設定
- 右上の「作成」をタップして、グループトークが完成
【参照】グループトークを作成・管理する|LINEみんなの使い方ガイド https://guide.line.me/ja/friends-and-groups/create-groups.html
2020年11月以降であれば、1:1やグループトークのテキストの情報は無制限(スマホの保存容量に準ずる)で保管されるので、後で「どんな内容だっけ?」と思ったときに読み返すことができます。
「LINEスマート通知」で防災情報を受け取ることができる
LINEは聴覚障害者の方と健聴者の方とのコミュニケーションをとることができる他に、命にかかわる防災情報を受け取ることもできます。
緊急地震速報や避難情報などは、対応しているスマートフォンに通知されるようになっていますが、大雨警報や河川洪水などは通知されない場合があります。
LINEの「スマート通知」では、
- 避難情報
- 地震情報
- 津波予報
- 土砂災害
- 河川洪水
- 気象警報
- 大雨危険度
- 火山情報
- 国民保護情報
上記9つの防災情報を受け取ることができるので、取りこぼすことなく防災情報を受け取ることができます。
利用するには、公式アカウント「LINEスマート通知」を友達追加するだけ。
友達に追加した後に、トークルーム下部の「受け取る情報の設定」をタップして、地域や防災情報の種類を選ぶことができます。
ZOOMで「UDトーク」と連携して字幕付き会議ができる

新型コロナウイルス感染症の影響で、ZOOMによるミーティングを採用する企業が増えています。
また「ZOOM飲み会」というように、これまで直接居酒屋に集まりお酒を飲んでいた方々が、ZOOMを活用してリモートでコミュニケーションをとるようにもなりました。
さまざまなシーンでZOOMが活用されるようになりましたが、ZOOMは音声とビデオ通話での利用が前提となるので、聴覚障害者の方が利用できないように感じる方が多いです。
しかしZOOMの「ユーザー補助機能」や、「UDトーク」を活用することで、会話の見える化が可能になります。
ZOOMのユーザー補助機能を活用する
ZOOMのユーザー補助機能では、「スピーカービュー」と「字幕」が、聴覚障害者の方にとって非常に役に立ちます。
まずスピーカービュー(アクティブスピーカー)は、話をしている方を識別して、自動でメイン表示に切り替えることができる機能です。
話をしている人を優先的にメイン表示されるので、大人数の会議の場合、誰が話しているのかをひと目で確認することができます。
スピーカービューの設定は、ZOOM画面右上に表示されている、「スピーカービュー」をクリックするだけで設定することができます。
また、ZOOMの字幕機能を設定すると、字幕入力担当者が入力した字幕を表示させることができます。
しかし字幕入力担当者が手動で入力する必要があるというデメリットがあるため、後述する「UDトーク」との連携をおすすめします。
ZOOMと「UDトーク」を設定する方法
「UDトーク」はスマートフォン・タブレット端末用アプリで、以下の機能を利用できるコミュニケーションツールです。
- 「音声認識+音声合成」機能を使って、視覚障害者間コミュニケーション
- 「多言語音声認識&翻訳」機能を使って、多言語コミュニケーション
- 「漢字かな変換や手書き」機能を使って、世代間コミュニケーション
1:1のコミュニケーションから大人数の会話・会議まで、オンラインでもオフラインでも活用することができるアプリです。
ZOOMとUDトークは連携させることで、手軽にリアルタイムの字幕をZOOMに表示させることができます。
- ZOOMミーティングを開始して、下部のメニューに表示されている「字幕」をクリック
- 「APIトークン」をコピーする
- UDトークのメニューにある「外部字幕サービス連携」をタップする
- 「字幕を送信する」を有効にして、「ZOOM」の空欄部分に2でコピーしたAPIトークンをペーストする
上記の設定方法でZOOMとUDトークを連携させて、ZOOMに字幕を表示させることができますが、UDトークはバックグラウンドで起動しないので、ZOOMを起動する端末と、UDトークを起動する端末をわける必要があります。
また、そのまま字幕を表示させると、資料を共有するときに画面と字幕がかさなってしまい見えにくいので、ZOOMを「左右表示モード」に切り替えて、資料の大きさを調整することで、字幕とかさならないようにすることができます。
まとめ

聴覚障害者の方と健聴者の方とのコミュニケーションの壁を解消するには、LINEとZOOMの字幕機能を活用することをおすすめします。
LINEのグループトークを利用すれば、テキストなら無制限で会話記録を残すことができ、最大500人までの人たちとリラルタイムの会話が可能です。
また「LINEスマート通知」を友達追加して設定することで、さまざまな災害通知をリアルタイムで受け取ることができます。
仕事や学校でZOOMを活用するときは、「スピーカービュー」と「字幕機能」を活用することで、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
字幕機能では「UDトーク」と連携させることで、リアルタイムな字幕表示が可能になります。