聞こえない子、聞こえにくい子の手話、日本語、英語力を育てる明晴学園は、日本で唯一の手話を第一言語とした私立学校です。
今回は、明晴学園とはどんな学校?明晴学園に入学するために必要なことについて詳しく解説していきます。
明晴学園とは?

明晴学園は東京都品川区にある私立学校で、手話を第一言語として位置づける日本で唯一のろう学校です。
明晴学園には耳が聞こえない子、あるいは耳が聞こえにくい子が通っています。 ここからは明晴学園がなぜ手話を第一言語として考えるのかを中心に、明晴学園に通う元気な子供たちの様子もご紹介いたします。
日本で唯一手話が第一言語の私立学校
1990年代まで手話は日本語獲得の邪魔になるという考えが主流だったため、耳が聞こえない子や耳が聞こえにくい子が通うろう学校では手話の使用を禁止しているところが多くありました。
そんな中で明晴学園は、「耳が聞こえない子や耳が聞こえくい子こそ手話で話しかけることが大切」と考えて2008年に設立・開校しました。
なぜ明晴学園が手話にこだわるのかというと、手話は生後1日目の赤ちゃんから「ことばの準備」として使用することができ、ことばの準備が整うことで音声のことばも身に付くようになると考えるからです。
明晴学園が考える耳が聞こえない子や耳が聞こえにくい子の一番の課題は、耳が聞こえないことではなく「ことばが身につかないこと」です。
従来のろう教育で主流だった口の動きを見てことばを理解する口話は、そもそもことばを獲得できていない耳が聞こえない子、耳が聞こえにくい子にとって容易ではありませんでした。
手話によって目でことばを見て理解することで日本語を学ぶのが明晴学園の教育方針です。
聴者が求めること、難聴者が求めること
明晴学園のこの教育方針は「バイリンガルろう教育」と呼ばれており、この教育方針は多くの日本のろう教育関係者が批判を浴びせています。
なぜ批判を浴びせるのかというと、
- 空論(イデオロギー)に先導され実証データに基づいていない
- 手話のみを習得させては言語・書き言葉の習得を遅らせている
- 手話と言語の橋渡しを十分にしてこなかった
という3つが理由です。
しかしこれは耳が聞こえる健聴者の考えであって、耳が聞こえない子や耳が聞こえにくい子、その保護者の方からすると、求めていることが根本的に違うことがわかります。
日本のろう教育関係者は「なんとかして耳が聞こえるようにすべき」と考えますが、耳が聞こえない子や耳が聞こえにくい子にとって、健聴者のように耳が聞こえるようにする補聴器や人工内耳では不十分であることがほとんどです。
また聞こえない、聞こえにくい耳で聞き取って言葉を理解するのではなく、手話によって「言語意識」を育(はぐ)むことで言語の基盤を育てることができるようになります。
ことばの準備が整ったら、ゆたかで力強い手話を育てていき、その後で手話と共に音声語の学習を始めることで、手話という確実で重要な「保険」を子供たちは身につけることができるようになります。
これは当事者とそうではない人たちが求めることの根本的な違いと言えます。
いつも静か、だけどいつも賑やか
NHKが2017年10月に放送した「ろうを生きる難聴を生きる」という番組では、明晴学園に通う元気な子供たちの様子を垣間(かいま)見ることができます。
明晴学園は手話が第一言語の学校なので、校内はいつも静かです。
しかし子供たちの様子を見ると、手話を使い楽しそうに会話をしているとても賑やかな様子に、私たち大人の心をほっこりと和(なご)ませてくれます。
手話を使った授業では、例えば英語であれば『I』は私、『Like』は好きというように、英語の授業も手話やモニターに映し出された言葉を通じて問題なく行うことができています。
のびのびと耳が聞こえない子や耳が聞こえにくい子が学ぶことができる環境が、明晴学園には整っています。
【参照】明晴学園って どんなところ?|明晴学園 https://www.meiseigakuen.ed.jp/summary/what
【参照】これまでの日本におけるバイリンガルろう教育とその理論的背景|母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会 https://mhb.jp/wp/wp-content/uploads/2018/05/20180318_1_Sasaki.pdf
【参照】静かで、にぎやかな学校【前編】-手話で学ぶ明晴学園- https://www.nhk.or.jp/heart-net/program/rounan/398/
明晴学園に入学するにはどうすればいいの?

耳が聞こえない子や、耳が聞こえにくい子が学ぶ環境が整った明晴学園に入学するにはどうすればいいのでしょうか?
ここからは明晴学園に入学できる年齢や入学受付の時期、明晴学園のオンライン登校について解説いたします。
明晴学園は何歳から通えるの?
明晴学園では、0〜2歳児までの聞こえない子、聞こえにくい子を対象とした児童発達支援事業「明晴プレスクールめだか」を運営している他に、3歳児〜5歳児までが通える幼稚部、6〜12歳までが通える小学部、13〜15歳までが通える中学部があります。
また明晴学園を卒業した後も手厚いサポートを受けることができ、例えば親子のコミュニケーションの支援や、保護者対象の情報提供、学校および家庭で使える教材の開発が行われています。
明晴学園の入学受はいつから?
毎年入学説明会や入試の日程などの入学受付の時期が異なりますが、2022年度の場合は以下のようなスケジュールで実施されました。
幼稚部・小学部
- 入学願書提出…2021年11月1日〜11月5日
- 入学試験…2021年11月27日
- 合格発表…2021年11月30日
中学部
- 入学願書提出…2022年1月4日〜1月7日
- 入学試験…2022年2月5日
- 合格発表…2022年2月8日
また、学費などの費用についても2022年度では以下のようになっています。
- 入学検定料…20,000円
- 入学金…100,000円
- 学費(授業料、設備費等。年間)…295,000円
上記学費は全額負担ではなく、きょうだい割引や住民税非課税世帯割引として授業料を半額、東京都から10万円の補助金、幼稚部は保育料無償化といった減免を受けることも可能です。
【参照】2022年度募集案内|明晴学園 https://www.meiseigakuen.ed.jp/entry/info
明晴学園のオンライン登校って?
新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威(もうい)をふるうなかで、緊急事態宣言などで学校が休校になった際に利用できるオンライン登校に取り組んでいます。
オンライン登校は幼稚部から中学部すべてで利用することができ、幼稚部では毎日たくさんの動画を配信し子供たちが家庭で学べるようにしたり、小学部では毎日Zoomを利用して顔を合わせて手話で会話を行います。
中学部では受験を控えていることもあり、学習の遅れをつくらないようにGoogleのGmailで課題を提出し、Zoomを使ったホームルームや手話、日本語、英語、数学、社会、体育、市民科の教科学習を行っています。
またプレスクールめだかでは、テレビ電話などで子供と家族の健康管理や相談支援、配信される手話動画の効果の確認や解説を行っています。
まとめ

明晴学園は、手話を第一言語として耳が聞こえない子、あるいは聞こえにくい子の学べる環境を整えた私立学校です。
校内はいつも静かですが、子供たちはいつも賑やかに過ごしており、プレスクールめだかや、幼稚部、小学部、中学部と一貫して通うことができます。
明晴学園は私立学校なので、入学するためには入学願書を提出して試験を受ける必要があります。
明晴学園の入学を検討されている方は、今回ご紹介したことを参考にしてみてくださいね。