聴覚障害者の方が“におい”で火災発生を察知できる!わさび臭の火災報知器とは?

聴覚障害者の方は音を聞き取りにくい、あるいは聞こえないので火災発生時の警報音を聞き取ることが難しいことが多いです。

そこで「音で火災発生を察知できなければ、においでではどうだろうか?」と考えた研究者らによって、わさびの香りで火災発生を知らせる火災報知器が発売されています。

今回は、このわさび火災報知器について、詳細と想定される利用シーンを詳しく解説していきます。

目次

わさび火災報知器とは?

2006年から設置が義務化された火災報知器は、一般的なもので煙や熱を検知して警報を鳴らしますが、聴覚障害者の方は警報音を聞き取ることができないので、火災の発生に気づくのが遅れてしまいます。

そこでここからは、過去の事例とイグ・ノーベル賞を受賞した「わさび火災報知器」について詳しく解説していきます。

過去に起きた悲惨な事故と聴覚障害者の方が抱えるリスク

昭和25年に起きた「岡山県の聾(ろう)学校寄宿舎火災」では、犠牲者16名全員が聴覚に障害を抱えていました。

【参照】聴覚障害の児童が避難できなかった昭和の大惨事|産経新聞 https://www.sankei.com/article/20211211-NIMPGYSONBKHXFW6Q7QJRI6ITY/

現代ではこのような悲惨なできごとは幸いなことに起こっていませんが、起こるリスクとは常に隣り合わせという聴覚障害者の方は多いです。

聴覚障害者のなかで補聴器を日々着用している方は、日中は補聴器を着用しているが、就寝時は外しているという方が多く、万が一就寝中に火災になったときに火災報知器の警報音を聞き取ることができないので、逃げ遅れてしまうリスクがあります。

“においで思わず起きる”火災報知器が発明される

国立大学法人滋賀医科大学の今居真医科大講師や、香りマーケティング協会理事長の田島幸信さんら日本人7人が協力して、わさびの香りがする火災法知識を発明しました。

この「わさび火災報知器」は、火災発生時にわさびのにおいがする期待を噴射(ふんしゃ)して、眠っている人を起こす仕組みになっています。

「本当に寝ているときにわさびの香りで起きることができるの?」と思った方が多いとおもいますが、滋賀医科大学の精神医学講座で1年6か月にわたり臨床実験を実施し、聴覚障害者と健常者すべての被験者のうち1名を除きすべての人がにおいを噴射後1〜2分で起きることを証明しています。

なぜ寝ているときにわさびのかおりで起きることができるのかというと、痛みを感じるわさびの刺激的な香りが、三叉神経(さんさしんけい)の刺激によって目が覚める仕組みになっているそうです。

このわさび火災報知器は、2011年9月29日にイグ・ノーベル賞の化学賞を、開発に携わった今居真滋賀医科大講師をはじめとする7名の日本人が共同受賞しています。

【参照】香りによる補助警報装置|東京都産業労働局
【参照】イグ・ノーベル賞、「わさび」火災報知器で日本人7人受賞|REUTERS
【参照】「わさびのにおい」で火災をお知らせ|株式会社シームス

わさび火災報知器の想定利用場所は?

聴覚障害者の方は火災の発生を警告音で気づくことができないので、ニオイで気づけるように工夫した「わさび火災報知器」が話題ですが、このわさび火災報知器はどのような利用シーンを想定しているのでしょうか?

ここからは、わさび火災報知器が想定している利用シーンについて解説していきます。

1.耳が聞こえにくい方が利用する施設

図書館や役所などの公共施設やホテルでは、聴覚障害者の方に限らず耳が遠いお年寄りなどが利用することも多いです。

耳が遠い場合、日常会話は大きな声で耳元で話す必要があるなど配慮が必要ですが、火災発生時はどんな人も冷静な精神状態を保つことが難しいので、火災発生時に逃げ遅れてしまう可能性があります。

もし公共施設やホテルの火災報知器が音ではなくにおいで知らせてくれるなら、聴覚にハンディキャップがある方も早期に火災発生に気づいて避難することが可能です。

2.聴覚特別支援学校や宿舎

わさび火災報知器は、実際に香川県立聾学校などで使用されています。

全国の聾学校や宿舎でわさび火災報知器が使用されれば、聴覚に障害を持った方がいちはやく火災の発生に気づくことができるので、迅速な避難が可能になります。

3.個人宅や会社

わさび火災報知器は1つあたり52,500円と一般的な火災報知器と比べて高額ですが、一般的な火災報知器は押し入れやトイレなど火の気のないところに設置して、寝室やキッチンやリビングなど火の気があって人が主に生活をする場所にわさび火災報知器を設置することで、就寝中でも火災の発生に気づくことができます。

個人宅へのわさび火災報知器を自費で設置するのは高額ですが、各自治体の支援金を利用して設置することが可能です。

実施していない自治体もありますが、例えば大阪府豊中市の「在宅障害者住宅改造助成」では、障害者手帳1〜2級などの市が住宅の改造の必要性を求めた世帯であれば、この助成金を利用することが可能です。

助成金額は各自治体によってさまざまですが、前述した大阪府豊中市の場合は生活保護世帯で助成対象額の全額、非課税世帯で9割助成、40,000円以下の世帯で2/3の9割、40,001円以上70,000円以下の世帯で1/2の9割が助成されます。

利用までには所得や工事内容の確認などステップがありますので、詳しくはお住まい地域の市役所などに聞いてみましょう。

また聴覚障害者の方を雇用する企業が導入することで、「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」を利用できので、経費負担を最小限にすることが可能です。

【参照】障害者を雇い入れた場合などの女性|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/intro-joseikin.html
【参照】住まい等生活環境への支援|豊中市 https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kenko/shougai/syogaifukushi_shimin/sumai.html

わさび火災報知器が購入できる場所は?

わさび火災報知器は、株式会社シームス(現・バイオミメテクスシンパシーズ)が製造・販売を行っています。

しかし製造・販売元のバイオミメテクスシンパシーズのホームページ上や、各ネット通販サイトに2022年3月時点でどこにも取り扱いがありませんでした。

もしかするとバイオミメテクスシンパシーズに直接連絡することで、販売している店舗やサイトを教えてくれるかもしれません。

まとめ

わさび火災報知器は、火災発生時にわさびの刺激臭を噴射することで、聴覚障害者の方に火災発生を知らせる画期的な火災報知器です。

その威力は就寝中に起きるくらいすさまじく、ほぼ確実に音ではなきにおいで火災発生を察知して早期に避難することが可能です。

わさび火災報知器は聴覚にハンディキャップを抱える人が利用する公共施設やホテルなどの他に、聾学校や宿舎、個人宅や会社なども利用シーンとして考えられています。

個人宅や会社がわさび火災報知器を設置する際は国や自治体の助成金を利用できる場合があるので、各市区町村役場に問い合わせてみましょう。

最後に、インターネット上ではわさび火災報知器の販売先に関する情報は見つけられませんでしたが、製造・販売を行うバイオミメテクスシンパシーに直接連絡することで、購入できる店舗などを教えてくれる可能性があります。

聴覚にハンディキャップがある方は、このような画期的なアイテムを設置することで、少しでも安心して暮らすことができるので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

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